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ホールセキュリティ本番 (2005年10月)

無意識の行動が生んだゴト対策の死角

人は意識しないままに毎回決まったパターンの行動を 取っていることがある。それをゴト師に見抜かれ、 対策の裏をかかれているとしたら一大事だ。 今回はあるホールで頻繁にゴト師に狙われるコーナーや 台があることに気付き、スタッフの無意識の行動との因果関係を 解明したケースを紹介する。

同一の場所になぜか被害が集中

 人は無意識のうちに決まったパターンの行動を取っていることがあります。それは個人的な癖であったり、一定の条件に対する人間一般の反射的な行動であったりします。困惑した時に頭をかいたり、急に目の前に何かが飛び込んできた時に思わず目をつぶるといった行動です。そうした無意識の行動は本人に決まったパターンの行動であるという自覚がないために思わぬ結果をもたらすことがあります。

 私の友人であるフシミコーポレーション(本社・名古屋市)の深谷部長は、自社が経営するホール内で過去に起きた何回かのゴト事例が、同じコーナーのほぼ同じ場所に集中していることに気付きました(図参照。5コースの網のかかった個所)。狙われているのは端から2番目から5番目ぐらいの台で、両端から一番遠いはずのコース中央でのゴト事例はありません。ちなみに私の経験や弊社のビデオでの検証からも、夜中に仕込まれたと思われるもの以外は、2台目から5台目ぐらいのゴト事例が圧倒的多数です。機種もメジャーな機種、メジャーでない機種に関係なく5機種に及び実行されていることがわかりました。ゴト手口も穴あけあり、仕込みありセルあり、体感器ありとあらゆることをやられていました。

 先に断っておきたいのですが、読者のみなさんの中には何回もゴトをやられるホールだからスタッフがだらけているのだろう、と考える方がいらっしゃるかも知れません。ですが、このフシミコーポレーションは社内教育も申し分なく、ホールスタッフのホール内での動きやあいさつなどはきびきびとしていて、だらけたところなど微塵もありません。スタッフの資質に問題があってゴトに狙われているわけではないということは断言しておきます。

 深谷部長はなぜ同じコーナーにゴト事例が集中するのか不思議に感じました。そこでゴトの様子を撮影した動画をまる1日かけて何度も見直してみたところ、非常に興味深い事実が判明しました。同ホールは昔ながらの長い22台島を使用しています。各島の担当はA君が1、2コース、B君が2、3コース、C君が4、5コースです。3コースが常時メインの島となり、現在は「大海物語M56」がワンボックス入っています。また、いつの場合も5コースが死に島となっており、ゴトに狙われるのもこのコースです。ちなみに4コースでのゴト事案は一度もありません。

想像以止にホールを調べているゴト師

人間の心理的な行動を研究した書物などによると、人間は何も意識していない場合、本来「時計と逆回り」に動くことが自然だそうです。この理由については諸説があり、心臓が胸の左寄りについているため、遠心力による心臓への負担を少なくするために「時計と逆回り」になるというものや、人間は利き足が軸足となるために軸足を内側にして回る方が回りやすいからというものなどがあります。利き足については、一般的に利き手と反対の足といわれており、右手が利き手の人が多いことを考えると左足を利き足、つまり軸足として内側に回る「時計と逆回り」になるというのです。そのほか、陸上競技のトラックや野球のグラウンド、競技スケートのリンクなどを思い出していただければわかると思いますが、すべて「時計と逆回り」となっており、これらもそうした回り方の方が回りやすい、またタイムも短縮できるといわれているようです。

1〜5コースを巡回するスタッフたちにそうしたことがどこまで影響していたかはわかりませんが、無意識のうちに繰り返されたパターンの巡回方法がいつの間にか習慣となってしまったものだと思われます。1〜4コースでは「時計回り」での巡回も時々ありましたが、5コースでは図の通りホールの形状がいびつであるために圧迫感を感じるのか、他のコースのスタッフと比べて人間の自然な動きにかなり忠実に動いていたのです。つまり、スタッフが右上から5コースヘ進入してくるケースは皆無に等しく、ほぼ100%右下からの進入だったのです。

そうなると当然、右上から2番目〜5番目の台はスタッフがコースに進入してきた時に最も遠い台となり、ゴト師にとってゴト行為が見つかりにくくなります。ゴトを実行する際の心理的なハードルも下がるでしょう。また、右下からだけの進入ということがわかれば、ゴト師にとって見張りも容易になります。事実、見張り役は5コース右下側に1人いたのですが、5コース右上での見張り役の存在は確認できませんでした。こうして右上から2番目〜5番目の台は狙われやすい台となってしまったのです。

そして、ゴト師に狙われている時間帯にも特徴がありました。すべて午後6時の少し前。ホールの業務でいうとちょうど早番と遅番の入れ替わりの時間帯です。また、責任者が引き継ぎのために事務所にいる時間帯でもありました。スタッフの動きが完全に読まれていたのです。

どのホールにも必ずリズムがあり、そのリズムをゴト師は利用していることがうかがい知れます。みなさんのホールでも独自のリズムに従って、休憩を回す時間を決め、ホールにいるスタッフの人数も変えていることでしょう。ですが、ゴト師はそのリズムを把握した上で、どの時間帯の、どの島の、どの台が一番狙いやすいかをあらかじめ調べているのです。ゴト師は私たちが想像する以上にホールのことを知り尽くしているのだということを強く自覚しなければなりません。たまに休憩回しの時間を変化させたり、暇な時間帯にいつもより多い人員を配置することなどであえてリズムを崩し、ゴト師に読まれにくい業務スケジュールを作ることも対策として必要だろうと思います。

山佐の体感器対策について

7月号本コーナー「遊技機メーカーのゴト対応は十分か」で山佐の「ニューパルサーRX」「同X」などの体感器攻略について言及しましたが、同社は実際に押収されたゴト器具を検証したところ、「体感器を使用することによりボーナス確率が上がることを確認した」として、上記2機種を含む4機種に関して変更届で設置できる対策部品を8月σ日から無償で提供すると発表しました。少しばかり時間はかかりましたが、ともかくもホールにとっては最近にない朗報です。潔く攻略されることを認め、対策部品の無償提供に踏み切った同社の決断に敬意を表します。