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ホールセキュリティ本番 (2005年12月)

装飾物がさえぎるホールの視界

UFJ銀行のATMでチラシを入れ惹小箱の中から隠しカメラが 見つかり、暗証番号を押す手元の動きなどが盗撮されていた 恐れが高いことが判明。国家公安委員長は「余分な箱で犯罪を 招くとは勉強が足らない」と同行を批判した。 だが、これはホールにとって決して他人事だと 笑っていられる事件ではない。 さまざまな装飾物が時としてホールに致命的な死角を 作り上げているからだ。

実行前に偵察ホール環境を調査

ハーネスやロムなどの仕込みゴトであれ、ピアノ線や電波などの直接のゴト行為であれ、ゴトの実行者は当然のことながら見つからないように実行しようとします。テレビでゴトの特集番組をやると、必ず放映される手口が"コウモリ"(仕込みゴトの実行を補助するため、3人から4人ぐらいが遊技台と背中合わせに立ち、背広などの衣服を広げ目的の遊技台を隠すように取り囲む)と呼ばれる行為です。これなどカムフラージュの典型的な手口であろうと思います。ちなみにこの場合、10人以上のグループで来店する時もあり、他のコーナーのスタッフを島に入らせないように、なんらかの形で足止めをします。場合によっては手をつかむような強引なことや、凶暴化することもあります。

これらのゴト師グループはほとんどの場合、実行前に目的のホールに足を運び、ホール内外のあらゆる環境を下調べします。偵察員が喜ぶホールは色々ありますが、まず挙げることができるのはスタッフに関して問題があるホールです。

例えば、スタッフの絶対数が足りないホールやスタッフが訓練されていないホールです。こうしたホールではスタッフの動きが悪く、緊張感がありません。その上、スタッフ同士で固まって私語をしているケースもあります。それから、訓練はされているが動きが一本調子のホール。店長クラスのスタッフが全くホールに出てこないホールなども問題です。

そして、設備的な部分に問題があるホールも偵察員が喜ぶホールです。例えば、店内に柱が多いホールや、監視カメラの位置が悪く、数も少ないホール。そして、店内が暗かったり、デザイン重視の設計で店内レイアウトがいびつで死角が多いホール。また、余計な置物や飾り物が多く、その上、ポップなどの張り紙をやたら張っているホールなども格好のターゲットになり得ます。私は職業柄、ホールに入ってまず気になるのが監視カメラや熱感知センサーなどの位置や数量ですが、その次に気になるのが実は上記の最後の項目です。

過剰な飾り物がゴト師の"隠れミノ"に

1年ほど前のことです。あるホール責任者から「昨日夜間侵入と思われる事件が発生したのですぐ来てほしい」と連絡が入りました。早速ホールに行き、例によって天井を見上げると、島の中で大小の風船が大量に浮かんでいました。これでは監視カメラの視界をさえぎってしまっているはず、と思いながら事務所に入らせてもらい、それとなくモニターを見ると、案の定かなりの数量の風船が映っています。その結果、何台かの遊技台の手元が見えなくなるなど、いたる所で死角を生む結果となっていました。また、こういうホールに限って島入り口の上部にアーチを掛けていることが多いのですが、このホールでもやはりアーチが掛かっていました。また、店内に立てている旗やのぼりなどもカメラの視界をさえぎっています。その上、今はやりの30センチもあるような大きな差し札を何枚も差していました。このホールは24時間監視カメラを作動させていますが、当然これらの障害物も昼夜を問わず存在しています。つまり、常にホールの中に死角を作り上げているわけです。

こういうホールでは悪事を働こうとする人間にとって心理的にやりやすいと感じるのではないでしょうか?その日、ここの貴任者からじっくりと話を聞きましたが、やはり、いろいろなゴト被害に遭い、苦労しているということです。

飾り物や置物は、もちろんホールを盛り上げるためにやっていることです。私も現場にいましたから、すべてを否定しようとは思いません。ですが、ゴテゴテに飾り物を付ければ付けるほど、知らず知らずのうちに監視カメラの視野を狭めるだけでなく、スタッフの目線はおろか動きさえもさえぎることになり、結果的にはゴト師グループにわざわざ"絶好の隠れミノを作ってやっているようなことになっています。皮肉を込めていうなら、こういうホールはゴト師から、三つ星はおろか最高点の五つ星の評価をしてもらえるかもしれません。

ところで監視カメラですが、いまは全国のほとんどのホールに設置されていると思います。しかし、安い物ではありません。ホールを盛り上げるイベントのためとはいえ、飾り物や置物はせっかくの高価な装置を無力化してしまうほどの危険性を持ち合わせているのです。弊社に上がってくるゴト報告の統計をとってみると、明らかにこういうタイプのホールはすっきりしたホールよりゴト行為の件数が多いことがわかっています。

前述のホールは、アーチや風船などを外してもらったところ、その後ずいぶんとゴト件数が減ったそうです。また、この飾り物についてですが、今年の夏頃に大阪市内のあるホールが所轄署から注意を受けています。それは、大きなパネルが視界をさえぎるという理由からです。こういう思わぬデメリットもあるということも念頭に入れておいてください。

本コーナーのご感想を

「光陰矢のごとし」と言いますが、早くもこのコーナーも12回目を迎え、本年最終号となりました。思えば、本誌編集部のN氏から、来年1年間ホールセキュリティー関連の原稿を書いてくれないか、と依頼があったのは昨年9月のこと。小学校のころから日記や作文が大の苦手で、当初は「とても1年間は持たないからだめ」と断りました。それでもN氏に脅され(?)、すかされながら戦々恐々始め、なんとか1年間続けることができました。これもひ とえに拙文を我慢して1年間読んでいただいた読者の方々、また、ネタ原稿を気持ちよく提供していただいた伏見コーポレーションの深谷部長、日遊協近畿支部のSくんなど、皆さまのご協力とご支援があったればこその快挙(私にとっては)です。1年間本当にありがとうございました。

年頭の予定では、もっと基本的なことを多くやろうと思っていたのですが、実践的なことがほとんどになってしまいました。正直なところ書きたいことの半分も書けなかった思いですが、はたして読者の皆さまには参考になりましたでしょうか?ここまでくると何となく感想を聞きたくなりました。批判でも何でもけっこうですので、思ったこと感じたことを本誌編集部にお寄せいただけるとありがたいものです。

ところで、鬼編集長から「来年も担当しろ」という命令が下りましたので、来年は別コーナーで今年書きそこなった分を含めて心新たにがんばりたいと思います。

読者の皆さま、どうか、良いお年をお迎えください。