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ホールセキュリティ本番 (2005年6月)

無承認ゴト対策機器の思わぬ落とし穴

ゴト被害にほとほと手を焼いているホールにとっては 無承認とわかっていても有効な対策機器があれば 取り付けてみたいという誘惑にかられがち。 しかし、そこには思わぬ落とし穴が待ち受けていることもある。 今月はそんな落とし穴にはまってしまったホールのてん末をもとに 対策機器を取り付ける際の注意点を考えてみたい。

対策機器取り付け業者がゴト部品を紛れ込ませる

 西日本のあるホールで起こった事件です。このホールでは、以前から吉宗に対する体感器ゴトに頭を悩ませていました。合法的な対策機器も設置していましたが、抜本的な解決とはなっていませんでした。そこである日、以前から付き合いがあったセキュリティ対策業者の勧めに従って、未承認とは知りながらレバー内蔵型体感器対策機器、いわゆる“ずらし”を取り付けたのです。これが、事件の始まりでした。事件を担当した警察署などからの話をもとにご紹介します。 

 ゴト師A(他にB、Cと2人の仲間がいます)が吉宗の不正部品内蔵型レバーを2台購入(1台15万円)し、そのホールに仕込みました。仕込み方法は約1カ月前にホールがレバー内蔵型のズラシ(14台)を取り付けた際、取り付け業者の作業員に金を渡し、それに紛れ込ませるという手口です。ただ、仕込んだ不正部品をうまく実効させコインを獲得するには煩雑なセット手順が必要です。Aはすでに50歳代半ばで自ら実行する自信がありません。また、見つかってしまったときにも1人では不安です。そこでいつも行く店で1日中パチンコ(スロット)を打っている頑丈そうな若いBとCの2人を仲間にしたのです。

 そのホールの吉宗の総台数は14台。その中の2台がいわゆるゴト師が付けた不正レバーです。表に出ているのは黄色い玉の部分と、わずかな金属部分だけで、当然ながら印などが付いているわけではありません。また、設置するときには14台の場所をランダムに替えていますので、その2台がどの台に付いているのかAらにはわからず、探し当てるまでかなり時間がかかりました。ようやく、不正レバーを取り付けた台を探し当てて1回だけ稼ぎました(上層部から1回に抜いていい金額は10万円以内と決められていたようです)。この時は2台ともうまく作動して約20万円を稼ぎ、3人で山分けしました。

セット打法を2重売り?ゴト師同士がバッティング

 数日後(上層部から毎日抜くとすぐばれるので、日を空けて通えと指示が出ていました)、Aがその店に行くと、その日はあいにく目指す台の1台はすでに先客D(男性)がいて、かなり出していました。ですが、もう1台の方は空いていたので、早速セット打ちを始めたものの、Aにはセットが難しく、後から合流する予定だった仲間の到着を待つことにしました。

 ところが、何気なく先客Dの様子を観察すると、なんと自分たちしか知らないはずのセット打法で打っているではありませんか。AはすぐにDを表に引っ張り出し問いつめようかと思いましたが、Dは隣の客と親しげに話しながら打っています。それが仲間であれば2人がかりで逆襲されるおそれがあります。Aは到着の遅れている仲間2人に電話で事情を説明し早く来るよう促しました。そうこうしているうち、Dは遊技を止め、隣に座っていたFと換金(きちんと10万円)し、車に戻っていきました。

 Aは慌てましたが、仲間がまだ到着していないため、1人で2人を呼び止めるわけにもいかずBやCと電話連絡を取り合いながら、DとFの2人が乗った車を尾行しました。そして、たどりついた先はAの地元にある別のパチンコホールの駐車場でした。

 やがてBとCの2人が到着。ホール内でパチンコをしていたDとFを無理やり店外に連れ出して自分の車に引っ張り込み、暴力に訴えながら親方の名前などを聞き出そうとしました。しかし、DとFは口を割りません。3人はいきり立ちましたが、どうしようもありません。親方の名前を聞き出すことはあきらめて、前の店でDがもうけた10万円を取り上げました。

 ところが、この状況を目撃していた人が110番通報。数名の警察官が駆けつけ、全員取り押さえられ警察署へ連行されました。事件はこうして発覚しました。

警察捜査への協力消極的だったホール

 車内に監禁し暴力をふるい怪我をさせていることから、捜査は殺人や傷害等を担当する強行犯係の刑事があたりました。つまり、不正機器(レバー内蔵型)を使用してコインを窃取したことでの逮捕ではなく、強盗及び逮捕事件での逮捕ということです。A、B、Cの3人はセット手順を素直に吐いていますが、泥棒の上前をはねていたD(Fは単なるP店仲間だったようです)は罪に問われることを恐れてか「セット手順などは一切知らない。今日はたまたま勝てただけだ」と言い張っているとのことです。刑事は事件の立件のためにホールに協力を求めましたが、“ずらし”を取り付けた負い目があるため、ホールは捜査協力に消極的であったといいます。

 ホールではAやDらがセット打ちをして出している間、台のデータが異常を示していたため、従業員をべったりと張り付け、監視させていました。しかし、仕込みであるため、当然体感器等は持っておらず、どうすることも出来なかったことと、“ずらし”を取り付けたことで安心してしまい、まさかという思いがあって、ゴト行為を許してしまったようです。 弊社にも、かなり以前からこのレバー内蔵型の不正部品がかなり出回っているという情報が入っていたため、関係者には何回も警告を出していました。

 今回の事件で改めてその流通が進行していることを実感しました。この部品についてはA-NET等にも何回か掲載されていますが、非常に精巧な作りだと思います。この不正部品のセット手順はレバーを数秒間を押し続けた後、素早く数回たたくという動作を繰り返すものだと、警察の取調べに対してAらは自供しています。

「自店を守るため」が自らを窮地に追い込む

 “ずらし”もそのゴト部品もそうですが、最初に登場したのはスタートレバーと中継基板間に割り込ませる外付けタイプのものでした。ですが、このタイプは発見が比較的容易だったため、すぐに発見のしにくいレバー内蔵型に移行しました。レバー内蔵型にはノーマルレバーの基板をそのまま使用し、それに“ずらし”及びゴトチップを載せた改造・変造型と、基板も完全に作り変え、全ての部品を載せ換えた偽造タイプに分類できます。コの字型のセンサー部分に隠したタイプもあり、目視だけではかなり発見が難しくなっています。また、メイン基板につながっている64Pのフラットケーブルでも当然可能(というより、これをさわればほぼ何でも可能)で、これに取り付ける不正部品もかなり出回っています。以前のモンスターハウスで見られたようなコネクタ内蔵型も昨年の後半には出ていました。最新の情報では、スタートレバーと中継基板をつなぐ4Pハーネスコネクタ内に仕込まれた不正コンピュータチップが発見されています。十二分にご注意ください。

 ホールとしては何も好きでこのような、いわゆる“ずらし”と呼ばれる未承認部品を取り付けたわけではないでしょう。自店を守るために仕方なく付けたのでしょうが、そのためにゴト被害にあっても被害届も出せない状況を招いてしまいました。このあたりのことはゴト師もよく心得ているため、ますます増長してきます。体感器を持ち込んでゴト行為を仕掛けたものの周期が取れない時には「あのホールでは未承認の部品を取り付けている」などと警察に告発したりするのです。実際に昨年、中国地方で警察が“ずらし”摘発のための強制捜査を行い、1台の遊技台を押収し、島閉鎖にいたったということも聞いています。これなども、ゴト師による告発がきっかけで発覚したものと思われます。

 また、“ずらし”はモノがモノであるだけに、内部犯行には格好の部品でもあります。セキュリティのための機器を設置するには十分すぎるほどの注意と点検が必要だと思います。