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ゴト現場24時 (2006年4月)

V4チップ記事で気になったこと

墓穴を掘る?

 日本にはことわざや格言が数多くありますが、時にそれが実に言い得て妙、という印象を与えることがあります。例えば、「墓穴を掘る」。広辞苑によると、滅びる原因を自ら作ってしまうことですが、この原稿を書いている今、世間を大いに騒がせている、民主党の永田寿康衆議院議員による「堀江メール」騒ぎには、見事にこの言葉が当てはまるように思います。怪しげな情報をもとに自民党幹事長を追及したものの、その情報の怪しさゆえに自分が窮地に落ちてしまい、謝罪会見まで開く結果を招いてしまいました。「墓穴を掘る」とはまさに彼(党も)のために存在しているような言葉です。

 インターネットというものは確かに非常に便利なものであって、いながらにしてニュースやスポーツの結果を知り、地図や交通手段を調べ、エンターテインメントや音楽を楽しみ、おまけに住宅からクルマまで好きな物を買うこともできます。さまざまなことが可能なメディアといえます。 しかしながら、物事には表がある以上、必ず裏もあり、この裏部分を悪用してあくどく稼ぎ、あるいは人をだまし、あげくの果てには殺人を請け負うようなサイトまでもが存在しています。

 元々、今回のライブドア事件については昨年の衆院選に立候補したホリエモンの選挙応援で「堀江氏は我が兄弟です」などと持ち上げた自民党幹事長の大きな非を追及することから始まっていました。この時点では攻める民主党側にそうとう強い追い風が吹いており、正々堂々と真正面から追及しておけば負けるけんかではなかったはずなのです。ところが、なにを血迷ったのか、5年ちょっとの議員在籍中に4回もの「懲罰動議」を受けたほか、阪神・淡路大震災で被災者が激甚災害指定を受けるために自ら火を付けて回ったなどの暴言を吐いたとされる問題議員が入手した不確かな情報をうのみにして、その議員に一般人の氏名まで公表するような質疑をさせました。しかも、その後も党を挙げて「(情報は)極めて信憑(ルビ・しんぴょう)性が高い」(本来、こういうものを出す場合は“高い”ではなく、100%という確証を得てから出すべきですが)という無理な発言を繰り返して、ますます深く墓穴を掘り進めました。その挙句、自民党と民主党の攻守が完全に所を変えてしまったのです。

 これは、その時点において信憑(ルビ・しんぴょう)性どころか真贋(ルビ・しんがん)性さえも疑われるような“ガセネタ”を、きちんと精査もせずに、テレビ中継されている国会の場に軽率に持ち出したことによるものです。これによって、民主党が国民の信頼を大きく下げることになったのは仕方がないことですが、政治そのものへの不信感も大きくしてしまったことは残念でなりません。

 さて、政治の話はここまでですが、ある業界誌(本誌ではありません)の3月号にV4チップに関して少し気になる記事が載っていました。その内容は、「祭りの達人」や「鉄拳」から「吉宗」でいう4Pハーネスタイプの不正配線《ぶら下がり》が発見されたことを理由に、【V4チップ】の持つセキュリティー性が突破されたというものです。そして、外部からIDを読み取られたのではないか、と結論づけて【V4チップ】搭載の全機種で《ぶら下がり》を付けられる可能性が出てきた、としています。

IDが解析された?

 この記事を書いた方がかなりの知識を持っていることはよくわかります。この方は記事でV4チップを搭載する最大のメリットは《ぶら下がり》の抑止にあると述べていますが、確かに弊社が入手した情報でも【V4チップ】は全て個別のIDを持っている、ということが確認できています。そのため《ぶら下がり》が付けにくくなっています。がしかし、はたして本当に【V4チップ】のセキュリティー性が突破されたのでしょうか? 私はそう結論づけるのはまだまだ早いのではないか、と考えている一人です。よく考えてみて下さい。今回《ぶら下がり》が出てきた機種である「祭りの達人」や「鉄拳」は、どちらも山佐という特定のメーカーの機種です。本誌編集部が取材したところによると、山佐は今回の件について、情報がなく、コメントできないとしたそうですが、ひとつのメーカーの機種で起こったことだけを見て【V4チップ】の持つセキュリティー性が突破されたのではないか、と述べるのは非常に危険な論法ではないか、と思います。ましてや“IDを解析された”などと飛躍しては、設置ホールを不安にするだけです。今はまだV2からV4へ移行している過渡期であり、現段階においてはこの機能が活用されていないケースも考えられます。

 当然のことながら各メーカーとも大当たり乱数の開発についてはしのぎを削り、それぞれが違う乱数を使っているはずですが、仮に突破されたとしたらその乱数の方ではないかという可能性を検証してみる必要もあるのではないでしょうか。その上で結論を出しても遅くはないと思います。

 近年、テクノロジーはまさに日進月歩の進化を続けています。そのことは同時に遊技台の不正部品も進化し続けていることを示しています。今後起こりうるゴトについてある程度の可能性は予測できても、それが具体的にどのような形になって登場するのかは予測できません。現時点では強固なセキュリティーを持っているものでも、将来にわたって絶対に安全という補償はないことは確かですが、くだんの記事を読む限り、今の段階で【V4チップ】のセキュリティーが突破されたとつなげてしまうことにはどうしても疑問符が付くのです。同じような勘違いが起きるケースで、昨年ついに偽造IDナックチップを搭載した偽造基板(CR大海物語など)が発見されましたが、見た目だけでは真贋の判別が非常にむずかしいほどの精巧な出来栄えです。しかし、このケースもそうですが、IDナックそのもののセキュリティーが突破されたわけではなく、あくまでも偽造品が出てきただけなのです。

 弊社は、曲がりなりもセキュリティー会社ですが、おかげさまで複数府県の遊技業協同組合で遊技台検査もさせていただいております。その際、ホールにとって本来はのぞかれたくない、“最高機密”に値する遊技台の心臓部を拝見して判定をすることになりますので、慎重の上にも慎重を重ねる姿勢が必要だと肝に銘じています。そこでは不正部品を見逃さないことも重要ですが、それ以上に、間違っても正規品を不正品と見誤ることがあってはなりません。情報も同じことで、真贋のはっきりしないうちは断定しませんし、世にも出すべきではないと考えています。

どうか、私の記事を毎号読んでくださっているみなさんは特に情報の精査にも注意を払っていただきたいと思います。