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ゴト現場24時 (2006年6月)

餅は餅屋。セキュリティは・・・

 読者の皆さんは病院でレントゲンを撮ったことがあると思います。弊社の社長は医者ですが、私も時々社長が経営する病院で胸などのレントゲンを撮ってもらいます。撮影が終わると診察室に呼ばれ、シャーカッセンという蛍光板にレントゲン写真をはさんで「ここの部分に少し“曇り”がある」などと細かい説明を受けることになります。

 皆さんは医者から「“曇り”がある」といわれて、それがどれのことなのか見分けが付くでしょうか? たいていの方は見分けが付かないと思います。レントゲン写真にはたくさんの陰影が写っていて、いったいどれが問題の“曇り”なのか、素人目には判別が難しいからです。

 実は私や弊社のスタッフも同じで、毎日のようにチップのレントゲンは見ていますが、人間のレントゲン写真は見慣れないため、説明を聞いてもどれがそうなのかよくわかりません。逆に弊社の社長にチップのレントゲン写真を見せて、「ここがおかしい」と説明しても、なかなかわからないようです。「餅(ルビ・もち)は餅屋」なのです。

 前回、取り上げたエルイーテック社製の「LE2080」を偽造したチップは明らかにレントゲン検査を意識して作られていました。チップ内部のパターンが驚くほど精巧になってきたことはすでに説明しましたが、そのため、素人ではレントゲン写真を見ても区別がつかなくなったのです。

 チップ開発の歴史は偽造チップとの戦いの歴史でもありました。偽造チップのこれまでの流れを振り返ってみましょう。

 ワンチップ型の登場はLE2068が最初です。そのころの偽造品はハイブリット型(2〜4個程度の小型チップをLE2068と同形の型で固めたタイプ)でしたので、レントゲンではっきりと見分けがつきました。ワンチップ型での偽造は相当難しいとされていましたが、結局のところはその偽造品も出てきました。その後、主流がLE2080に移りましたが、このタイプの偽造品も最初はハイブリッド型でした。すぐにワンチップ型が登場しましたが、その時のものはレントゲンで正否を判定することがさほど難しくはありませんでした。しかし、このLE2080を使用した遊技機種は数多く発売されたため、その間、偽造チップも高度な進化を遂げていき、やがて非常に精巧なものが出てくることになります。ちなみにLE2080の生チップは弊社が知る限りでは7〜8種類。これは、何社もが偽造品を製作しているということではなく、1〜2社程度が長期間にわたって改良を重ねながら、製作し続けた結果だと思われます。これに印字などの加工をしたものを加えると、偽造パターンは10種類を優に越えます。

 後継チップであるV2ライト(LE2280)の偽造品は、当初LE2080をそのまま使い、表面の印字だけをLE2280としていました。しかしながら、これについてもすぐにLE2280のオリジナルタイプが登場しました。その内部パターンの精巧さは目を見張ります。いまはすでに当初発売されたV4チップも、またIDナックチップについてさえも偽造品が登場しているわけですが、古今東西物真似が途絶えたことは一度もないのです。ある意味悲観することではなく値打ちのあるものの宿命と捉えるべきしょう。そんな中、情報によると両チップとも次のタイプにはいろんな(偽造をしにくくするための)仕掛けがしてあるそうですので、罰則の強化とあわせてこういうものは減っていくと思われます。

 ところで当たり前のことですが、不正チップをレントゲン機の中に入れると、「ブー」とブザー音が鳴って偽造チップであることを知らせてくれる、ということはありません。正規であるか、偽造であるかは肉眼で判断します。つまり、相当な知識と経験が必要なのです。ますます巧妙になっていく偽造技術に対抗するためには、それを迎え撃つこちらも研究を重ね、技術革新を図っていく必要があります。セキュリティーのプロとして手を抜くことは許されないと気を引き締めています。