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ゴト現場24時 (2008年7月)

驚くほど精巧な出来

私事で恐縮ですが、6月14日から5泊6日の日程で、カジノの本場、ラスベガスへ研修に行ってまいります。日遊協の行事なのですが、生まれて初めてのラスベガスで非常に楽しみです。カジノの館内のセキュリティーの見学やそれに関するセミナーなどを受講する予定で、本場のセキュリティーがどうなっているのか、しっかりと勉強してこようと考えています。そこで学んできたことについてはまたこのコーナーで紹介させていただくつもりです。

さて、今回は最近発生しているゴト事例を取り上げます。A−NETなどを見ていて特に目立つゴト事例は、玉・コインの持ち込みゴトや磁石ゴトのようにアナログ的なゴト手口がほとんどです。これは業界挙げてのセキュリティー強化が功を奏した結果であるわけで、それだけゴト師側が追い詰められてきていることの証でもあるわけです。それと比例してゴト事例も以前とは比べてものにならないほど減っています。ただし減ってはいますが、石川五右衛門が最期に詠んだように「世に盗人の種は尽きまじ」であり、ホールからゴトの種が完全に尽きることはありません。

この原稿を書いている1週間ほど前、あるホールから遊技機の基板に対するレントゲン検査を依頼されました。150台ほどでしたが、その中の2台から不正基板が発見されたのです。機種は「CR新世紀エヴァンゲリオン使徒、再びSFW(ビスティ)」でした。

この手口は以前、この連載でも取り上げた事例です。しかし、今回あえてもう一度取り上げるのは、先日発見された基板の外見の偽装が驚くほど進化しており、本物と見分けがつかないような出来栄えであったからです。ゴト師側の技術力アップにかける執念にはこれまでもたびたび舌を巻いてきました。ゴト師を評価するのもいまいましいのですが、今回は見事というほかないものでした。

この事例は、昨年前半ごろから復活流行している、メインチップ周りに付けられている小さいICチップの改造です。"復活"とことわったのは、やり方そのものは今に始まった手口ではなく、V2時代にもメインチップ以外のチップを不正改造した手口が存在していたからです。当時はメインロムと同じような大きさのCPUをさわっていたのですが、事例的にはメインロムの改造・偽造が圧倒的に多く発生していました。

最近発生している主基板改造は、上記事例がほとんどであることは読者の皆さんもよくご存知の通りです。これは、V4チップの偽造が非常にむずかしいことと、チェッカーでの検査が有効なメインチップと比べて、周辺チップはチェッカーでは判別できないことが最大の理由だと考えられます。

このICチップは元々基板に直付けされているのですが、そのチップのハンダを溶かしていったん取り出し、そのチップの裏側部分を削りこんで小さな凹みを作り、そこに2ミリ四方ぐらいの精巧な電子部品を埋め込み、再度ハンダを付け直します。目視検査をした場合、チップそのものは本物ですので、印字の比較(画像1)では絶対に発見できません。チップを再取り付けするときは手ハンダ(工場では当然自動ハンダ)となるはずですので、どうやってもその部分が汚くなります。つまりそこをしっかり確認することで判別が可能だったのです。

(画像1)

実際、昨年の段階ではまだまだそういう状態で、また現在発見されるものの中にもそういうものが少なくありません。しかし、今回発見されたタイプは基板表側ハンダ(画像2)もさることながら、裏側ハンダ(画像3)にいたってはほとんど見分けがつかないぐらい驚くほど精巧にハンダ付けされています。その上、基板ケースのカシメも非常にきれいに復元されていて(画像4)、見ての通り切断痕やキズなどがまったく見当たりません。大変不謹慎と思いながらも「本当にいい仕事をしているな!」と感心せざるをえない出来栄えなのです。ことの善悪はべつにして、技術の進歩は目を見張るものがあります。この仕事の実行者がどういう種類の人間かはわかりませんが、おそらくかなり熟練した職人であろうと思います。

(画像2)

(画像3)

(画像4)

今回はレントゲンを使っての検査であったため、写真(画像5)を見ることで容易に不正基板と断定できました。私どもは毎日こういう基板を見ており、いくつかの不正発見ポイントがあるので、目視でもまず見逃すことはありませんが、今回ほどの精巧なタイプになると、ホールスタッフによる目視検査では不正を見抜くことが不可能に近いのではないかと思います。自社のコマーシャルのようになってしまい恐縮ですが、ここまでくると不正かどうかを判別するにはレントゲンしかないのではないかとさえ思うほどなのです。ぜひ、読者のみなさんはご注意ください。

(画像5)