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ゴトと闘う (2010年3月)

無防備や手薄などは論外です。遊技機の弱点把握が絶対必要

先月号では、近畿支部セキュリ ティー部会員が実行した「パチン コ遊技機のアタッカーやチューリ ップにノーマル時に無理やり玉を 入れた場合どうなるか」の調査結果を掲載しましたが、少しはご参 考になったでしょうか。正直なと ころあまり意味がないと感じられ ている方もいるのではないかと思います。そこで今号では、わが近 畿支部セキュリティー部会のメンバー達がなぜこのように地味な調 査を繰り返しているのかをお伝えしましょう。ゴト師たちは遊技台 の弱いところをきちんと調べて知っており、そこを徹底的に利用してゴトを働いているのに対し、ホ ール側はほとんど何も知らないと いう現状があります。その状況を 少しでも解消するための調査研究 なのです。実際に過去も、現在に おいても発生しているゴト手口を 検証すると、まさにひとつの結論、 私達の無知が必然的にわかってき ます。いままでは何をやられてい るかもわからずに闇雲に守ってき たものが、自らの弱いところを知 ることで防御方法がはっきりと見 えてきます。当然、不正なやり口 に対し、かなり守りやすくなるは ずです。今号ではこのことを中心に話を進めてみたいと思います。

弱い者いじめが好きなゴト師犯罪者は皆同じ

さて、この詳細に入る前に、皆さんにひとつだけQ&Aをしますのでご自身で回答を出してみてください。

Q.ゴト師達がゴトを働こうとした場合、大別すると、どういうもの(ところ等)を狙おうと考え実行に移してくるのでしょうか。この後の文章に目を移す前に少しだけ考えて見てください。なおこ の場合のゴト師達というのはグループ化されている熟練のゴト師であり、ときどき捕まる素人のゴト師は省きます。

お分かりになりましたか。もちろん答えはひとつでは無いでしょうが、なんらかの答えが出たでしょうか?

私の独断と偏見による結論はすでに先述しましたが、「ゴト師は弱いものいじめが大好き」だとい うことが根本にあります。このことは不正対策勉強会などにおいても、私が繰り返しお伝えしていることですので、読者の方の中にはすでに何回かお聞きになった方もおられると思います。私は警察官を経験したわけでもなくパチンコ店以外で起きる犯罪者の行動をとやくかく云える立場ではありませんが、おそらくこれらの犯罪者も狙いをつけるところはほとんど同様であると推測されます。

ところで「ゴト師は弱いものいじめが大好き」という抽象的な言葉で決め付けた場合、業界経験の長く特にゴト被害に遭われた方なら理解できると思いますが、読者の中には業界経験が浅く初々しい方も大勢おられ、「まったく何の意味なのかわからない」といわれるかも知れませんので、もう少し具体的に解説したいと思います。

可能なゴト手口が10種類以上もある人気台もあった

「弱いもの」とはゴトをやるための条件であり環境になるわけですが、その条件や環境がゴト師にとって有利に働くものであればそのホールは「弱いもの」となり、ゴト師に思い切りいじめられることになります。ただし、いじめられていることに気付いていない、つまり、ゴト師が来店していることに気が付いていないホールも実際あるのです。絶対にこういうホールになってほしくありません。以前もこのぺージで問題提起をした「自ホールにゴト師が来店しているかいないか」というアンケートを別々の地域で何回か取ったことがあるのですが、「まったく(ゴト師が)来店していない」と答えた方が10%〜15%いるのです。大変申し訳ないのですが、残念ながらゴト師が来店していないホールなど100%ありません。それは都会であれ辺鄙な地方であれまつたく関係ありません。

4〜5年前のある時期のことですが本州からゴト師が一斉に消えたことがあります。ゴト師たちはどこに行ったかのというとパチンコ店が存在する離島に集結したのです。その理由はと言いますと、その時期に客付きのよいある有名な某機種がありました。しかしながら人気はあったのですが、というかあったからこそともいえますが、もともとその機種はゴト被害も半端ではなく無防備状態で設置していた場合、可能なゴト手口の種類は10種類以上(私がわかっているだけで12種類)存在していました。

ホールの死角など弱さ見せれぱいじめは終わらない

しかし、この台は認定期間切れが近く、最大で2か月(地方の公安委員会によって多少のずれがある)ほどの猶予しかなく、本州のパチンコ店の場合はすでにはずし始めていました。またぎりぎりまで使っているホールはほとんどのホールがそれなりにゴト対策をしていた上で、最大の警戒をしていたためゴト行為がかなりやりにくくなっていました。そんなところからゴト師たちは離島のパチンコ店に目を向け集団で移動したわけですが、機種構成は都会も離島もなく日本全国同じようなものですので、当然ながらその某機種も主流機種となって多数の台数が設置されていていました。多くの離島のパチンコ店はゴト情報の入手が遅れていたこともありほとんど無防備状態でしたので、ゴト師たちにとつては非常においしい場所であったわけです。まさに「ゴト師は弱いものいじめが大好き」の典型的な例です。

前述したことを含め私の経験則から推測することですが、ゴト師が実行計画を立てた場合、まずはやりやすい(弱い)ホールを決めて、そのホールのやりやすい(弱い)機種、あるいは機器類などを探し出し、次に(遊技台等の)弱点を攻める(ゴト実行)わけですが、見つからない場合やいわゆる外国人グループなどの場合はそういう条件を強引にでも作り出します。

それでは具体的にどういうところかを探し出すのかと言いますと、まずはホールスタッフが手薄なホール、柱やポスター等で監視カメラが死角になっているコーナーがあるホールにおけるそういう場所(遊技機等)は仕込みや外部的なゴト手口が当然のごとくやりやすくなるわけです。

磁石感知器にしてもわずかな個所のズレで反応しないことも

また個別の遊技台等で発生する磁石ゴトに絞り込むと、磁石感知器が付いている台よりは付いていない台を狙うのは当たり前です。また最近ではメーカーが標準的に磁石感知器や電磁波感知器類を付けている場合が多くなりだしましたが、磁石感知器を例に取ると、盤面のかなりの範囲で反応するメーカー機種がある半面、スタートセンサー周りのごく一部しか反応しないメーカー機種もかなりあります。彼ら(ゴト師)はゴトをする前にどの位置で感知器が反応するのかということを徹底的に調べていますので、エラー音やランプを点灯させることなくゴトを実行してきています。実際にこの手口によるゴト事例はかなり発生していますが、今号ではごく最近発生した実例を紹介します。

ターゲットになった機種サミー製のCRAデジハネ北斗の拳STVですが、この機種もメーカーが標準的に磁石感知器を付けている台です。写真で見るとおり磁石感知器が反応しない箇所ときちんと反応する箇所の差はわずかなのですが、そのわずかな箇所で磁石を使って玉止めをしてそのまま打ち込んで玉を積み上げていき、スタートセンサーの横まで到達したところでその状態を目立たなくするために下側の余分な玉は台を上手に叩きながら落としてしまいます。スタートの左側の釘にだけ何発かの玉が残っているのですが、それが誘導通路となりそのまま打つだけで玉がスタート穴にどんどん入っていくというゴト手口です。

このように磁石や電磁波等の感知器等が標準で付いている台と付いていない台の差や、感知範囲の幅を突いてくる狭問的なゴト事例はいつの時代においても発生しています。ホールとしてもこのあたりのことを完全に把握することによって、ゴトは相当防ぐことができるわけです。またメーカー出荷時から標準で磁石センサーが付いてくることは当然大賛成ですが、できることなら、盤面の全ての範囲で反応するような磁石感知器の開発が必要ではないかと思います。またホール側の方も単に磁石感知器が付いているということだけ安心してしまうことなく、感知しない箇所もあることを十分に把握して巡回時に活用してください。

低貸玉や甘デジ監視がゆるく練習にも稼ぎにも

ところで、最近は1円パチンコや5円スロットやバラエティコーナーそして甘デジが大流行ですが、この営業形態そのものについては業界にとってもお客様にとってもよいことであり、なにも言うことありません。しかしながら大半のホールがそうであるように非常に気になることがあります。それは前述のコーナーには「ゴト師は来ない」と決め付けているのではないかと思えるほどホールスタッフが手薄にしていることです。ホール内で見ていると極端な場合、客に呼ばれない限りスタッフはほとんどそのコーナーを通りません。1パチやバラエティコーナーの場合、15台から20台の島に1台か2台ずつの別機種が並んでいます。これらの機種はちょっと前までホールの主力機種になっていて当然ながらゴト事例も相当あったわけで、そのことはまったく変わってはいないのです。こういうコーナーですからゴト師たちはゴト手口の練習を思う存分できますし、また一般の客でさえ出玉をポケットにしまい込み何食わぬ顔で4パチヘ持っていってその玉を使ったりすることも可能なのです。

また、甘デジコーナーもゴト師の格好のターゲットとなります。ほとんどの甘デジの場合、大当たりがちょくちょく来ますが、大当たり時のラウンド数は15ラウンドだけでなく、3ラウンドとか5ラウンドなどがかなりの確率で出る仕組みになっています。それをゴト師は利用してきます。払い出しセンサーに玉止めして電磁波を発射して玉をどんどん出すゴト事例が多発していますが、3とか5とかのラウンドの時にこれをやり15ラウンド分の出玉を取得するという手口です。このゴト手口をやられるとホールコンのデータ上による異常発見はかなり難しくなってくるうえ、このコーナーもスタッフが手薄です。これらのコーナーの現状を今のままにしておくと、まるでゴト師養成コーナーのようなことになりかねないということを、どうか頭の隅にでも入れていただきたいものです。

ビルの壁破りパチンコ店でも味わった苦い経験

ところで、先日、銀座の宝石店が爆窃団という犯罪グループによって襲われ、壁に穴を開けられて何億円だかの宝石類を盗まれる、というニュースが流れていましたが、この事件を聞いたとき、一瞬、一時期わが業界においても大流行していた事件を思い出しました。おそらく皆さんの中にも苦々しい思いとしてまだまだ記憶に残っていることと思います。この事件と同様で壁に穴を開けられて遊技台の裏側に忍び込みこまれ不正基板と交換するという手口です。当時被害にあったホールヘ行ってみましましたが、穴を開けられたホールの外側部分は40〜50pほどの隙間しかなく、太っている人間ではとても動くことができないほどでした。しかも縦横が約40pで厚みが30pほどもあるコンクリートブロックを外してからホール側の壁を切断してあるのですが、基板交換が完了後にきちんとブロックは戻されているのです。もちろん、一人での犯行ではないことが伺えます。実は固定式の監視カメラが建物周りに設置してあるのですが、長い時間かけてビデオを巻き戻してみると、犯行日と思われる日の映像が真っ黒になっているのです。おそらく外側に何かを被せた上で作業をしたものと思われます。

これなどは一旦侵入してしまえば監視カメラや人の目にもまったく触れることがないという条件が出来上がっているわけですから、余裕を持って仕事ができたことでしょう。実際に交換された基板を見ましたが、基板そのものもまた再取り付けも非常に丁寧な作業をしてありました。

これなどもゴト師たちがいかに用意周到に下見をして準備をしたものかということがわる典型的な例です。【訂正】2月号に掲載した「パチンコ遊技機のアタッカーやチューリップにノーマル時に無理やり玉を入れた場合どうなるか」の調査で誤りがありましたので、その部分を訂正し、掲載します。

■南光国昭■
パチンコパチスロ産業界で、数少ないゴト対策の専門家として多方面で活躍している。株式会社コスモローム研究所相談役、日遊協近畿支部セキュリティー部会顧問、日遊協不正対策勉強会講師。