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セキュリティー温故知新 (6月号)

セキュリティー強化により内部犯行増加の可能性も

前々回の4月号でも書きましたが、ここ数年、ゴト事例zの報告件数が急速に減少しています。特に本年はこれが顕著で、ゴト事例データベースのA-NET 2012年版には、4月16日現在、いまだ14件の事例報告しかありません。
この現象は業界にとって喜ばしいことではありますが、本当にゴト事例そのものが減少したのでしょうか?たしかに、警察庁のからの強い指導によるものや、業界全体における不正撲滅への真摯な取り組み、遊技機や周辺機器類等各部のセキュリティー強化、各県遊協単位の組合や個別ホール等におけるゴト対策の意識強化等々がコラボしたことによる、ゴト事例の減少は間違いなくあるでしょう。
しかしながら、現場のホールスタッフの安心感が増幅したかと言うと、どうもそうではなさそうです。逆にいまの静けさが不気味に感じているスタッフも相当います。

ホール間の情報共有を目的に登場したA-NET

ところで、先ほどのA-NETのホームページを見ると1999年の10月からゴト事例のデータベースとして登場していますが、元々は当時の都遊協青年部有志が中心となって、東京を中心とした関東圏内で猛威を振るうゴト行為に対する対応策として登場したと伺っています。
ちなみに手前ごとで申し訳ありませんが、その当時私は、大阪府枚方市で4店舗を構えるコスモグループの防犯部長を務めていました。そのときのホール事情は、例の「梁山泊グループ」が大手を振って闊歩していたときで、どこのホールにもゴト行為の対象となる遊技機が満載でした。
その年の2年ほど前に、電波ゴトで大きな被害をだした「ギンギラパラダイス」を始め、出入りの激しい権利物の「ミルキーバー」や「CRモンスターハウス」、スロットでは後に体感器で狙われた「大花火」等、曲者遊技機が多数を占めていたわけですから、まさにどの機種が狙われてもおかしくなかったほどでした。手口的には裏ロムの語源になっている「改造チップ」や「偽造基板」が蔓延、ゴト事例は自社ホールでも発生していましたが、近所のライバルホールにおいてもかなり発生していたはずです。
しかし、当時はホール間における横の連絡がまったくないと断言できるような業界環境であったため、ゴト情報の入手が非常にむずかしく、ゴト対策をするにしてもゴト師グループ等が来店した場合の対応にしても、参考になるものがほとんどなかったわけです。

ゴト行為ではない梁山泊の攻略法

そんな中、前出の「梁山泊グループ」7名〜8名が私の勤めるコスモグループのK店に来店しましたが、私はすぐに出向き強い対応を取り彼らには1時間ほどで帰っていただきました。
ところで余談ですが、この梁山泊が得意とした攻略法はいわゆる人間体感器です。主に狙った機種は「モンスターハウス」です。この機種は大当たり確率がたしか367分の1と記憶していますが、間違っていたらごめんなさい。デジタル数字が奇数で大当たりすると確率変動に入り、偶数での大当たりで確変が終了します。当然大当たりは自力で引くわけですが、いったん確率変動で大当たりした場合、彼らは止め打ちをして偶数を引かない打ち方をしたわけですから、その日は閉店まで確率変動が続くわけです。
なぜ、このようなことができたかと言うと、時計の文字盤を思い浮かべていただきたいのですが、大当たり周期が時計と同じくプラスワン方式で動いていて、1周するのに約2秒間かかっていたため、体感として人間の限界と言われる0.5秒となる1周を4分割して打つわけです。仮に1時の位置に奇数があるとすると、その真反対の7時の位置は偶数であるたわ、確率変動を引いた後は、7時に入りやすい3時や4時の位置では絶対に玉を飛ばさない打ち方をしたわけです。もらろん、体のどこかにリズムを正確に刻むメトロノームのような機器をもっていました。
結果としては再度確率変動の大当たりを引くか、単なる外れかのどちらかになるわけで、電原を切らない限り連チャンが続きます。この梁山泊グループよ全国をまたにかけて稼いだわけですが、なにぶん、攻略法であってゴト行為ではないため、警察を呼んでもどうすることができず、全国のホールが手を焼きました。当時のテレビが大々的に取り上げたりしていましたから、まるで英雄気取りです。
こういう時代でしたから、私は明らかにゴト師が主催していて受講料が7万円もするゴトセミナーにも参加、必死になって情報を集め自社ホールのセキュリティーに役立てました。

2000年の後半ぐらいに、とあるゴトセミナー会場で同席した某社のセキュリティー担当であるM氏と意気投合、彼の会社の本社は名古屋市にあって全国展開をしているほどの強い会社であったため、A-NETにはすでに入会していたことからその存在を知り、都遊協青年部の幹部であったK氏に直接お願いに出向き、「あなたももらうだけではなくゴト事例の掲載に協力してくださいね」ということを条件として、A-NET情報を頂くことができるようになりました。

発覚しにくい内部犯行にも注意が必要

発覚しにくい内部犯行にも注意が必要さて、A-NETの当初は年に700件以上のゴト事例が掲載されていたこともあり、それらをいま見直すととても参考になることがいっぱいあります。が気になる点も一つあります。それは内部犯行の事例が1事例しか掲載されていないことですが、最後に先日関西で発生した内部犯の事例を紹介いたしますので、ぜひ参考にしてください。

ホール名は仮にCとします。
ホールCはこのところ200枚前後、多い日には500枚もの誤差コインが連日続いていました。そのためまずはゴト行為の可能性を考えクレマンゴト対策機器の取り付けや、関連する機器類の徹底調査を実行しました。また、スロットの集中端子板が旧型であったため、それらを一斉交換、その他、機器的な故障で誤差コインの発生が考えられることは全て実行しました。もちろん内部ゴトも疑い調査しましたが、その時点ではなにも出ませんでした。そんな中、ある常連客から「アルバイトスタッフがコインを持ち出している」という、通報が入りました。客の話では年齢30歳前後ということだったので、アルバイトA(以下A)を割り出し、しばらくは決定的な証拠確定のため泳がせることにしたところ、Aのポケットが異常に膨らんでいることを発見、閉店作業時にはジャラジャラと音が鳴っていたほどでした。そこでいつメダルをポケットに入れているのかを確認するため監視カメラで追尾したところ、メダル補給時にその一部をポケットに仕舞い込んでいました。この時点で本人を事務所に呼び追及したところ全て白状しました。隠し場所はAの専用ロッカーでその時点で1,500枚ほどを隠しており、友人(常連客)に頼まれ犯行に及んだ、ということです。毎回、50枚から100枚程度をポケットに入れロッカーに保管、休憩時問に外で友人に渡していたそうです。

Aはすでにまる2年間ほど勤務していますが、犯行は昨年からはじめ服装が分厚くなる冬シーズンに多く実行していて、総枚数は1万枚から2万枚を持ち出した、ということです。Aの身柄を証拠ビデオと共に警察に預け、これまでの経費とメダル実費の請求を申し立てました。その後は、スタッフの持ち物検査や専用ロッカーの会社管理を実行しています。

この会社の幹部は「今回の件の発覚により、日ごろからスタッフや常連客が不正を行わないか疑いを持ち、監視する必要性が絶対にある、という教訓を得た」と語っています。

セキュリティーが強化された分、内部犯行は増えることが予想されます。どうかくれぐれもご注意下さい。

■南光国昭■
パチンコパチスロ産業界で、数少ないゴト対策の専門家として多方面で活躍している。株式会社コスモローム研究所相談役、日遊協近畿支部セキュリティー部会顧問、日遊協不正対策勉強会講師。