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セキュリティー温故知新 (7月号)

社内環境の改善により内部不正を防止する

先日、東京での会合で久しぶりにPOKKA吉田さんの講演を聞く機会がありましたが、相変わらず軽妙で、そして藻蓄のある内容でとても参考になりました。特に印象に残った一つは、2025年、2050年という、将来の見通しの話です。これはメディア等でも盛んに言われていることですが、日本人のトータル人口の減少と極端な高齢化です。なにもパチンコ産業に限ったことではないと思いますが、新18歳の取り込みに失敗すると業界は過去に経験したことがないほどの凋落を迎える、と言っていました。

また余談で、便器の売上の話を持ち出していましたが、今、この便器の売上トップはINA'XでもTOTOでもなく、なんとパナソニックなんだそうです。その理由は材料がプラスチックであるため、自動洗浄という付加価値を付けることができたためだそうです。INAXやTOTOは元々陶器製造の会社で便器も陶器ですので、自動洗浄は付けにくいようです。思わず「なるほどな!」と感心しました。

ラッキーナンバー制を悪用した内部犯行

さて、先月号では「内部犯行が増加する恐れがあるのでご注意ください」という話で閉めましたが、今回はすでに時効になっているでしょうから、15年ほど前に私が実際に経験した内部犯行にまつわる苦い思い出を紹介します。

私はC産業株式会社というP店を4店舗構えていた会社に勤務していましたが、その中のS店での話です。この当時、関西、とりわけ大阪のほとんどのホールが、セブン機の大当たり時の出玉交換ルールは、今のように「無制限出玉移動有り」というルールではなく、3・7(まれにその他の奇数)以外は「1回交換出玉移動無し」の"ラッキーナンバー制"を採用していました。関西方面の方はよくご存知と思いますが、関東方面の方は早くから無制限方式でしたから、よく知らない方もいるかもしれませんので、そのルールを少し確認しておきます。

まず出玉交換ですが、当時はほとんどのホールが42個交換だったと記憶しています。このことはお客様にとって、大当たりが3・7の数字でかかるのか、或いはその他の数字でかかるのかで、財布から出ていくお金がぜんぜん違ってくることになり、当然出玉で再遊技した方が断然有利になるわけです。ではその判定はどうするのか、ということですが、もちろんコンピューターでの確認ではありません。大当たりがかかった段階で必ず店員が出向き、次回をこのまま出玉で打てるのか、或いは交換しなければならないのかの大当たり数字の確認をするわけです。その後、遊技台頭上の札差にどちらかの札(継続のみだったかもしれません)を挿すわけです。いまもそうですが、これらの仕事はほとんどの場合アルバイト社員が担当しているわけで、そこに一つの落とし穴があったのです。

客からリベートをもらい、継続札に差し替える

ある日、常連客から幹部社員に「お前のところの従業員が出目交換のとき客から金もらっとるぞ、名前は知らんがあの一番背の高いやつだ」という内容の通報があったのです。 一番背の高いやつ、と言えば、すぐにアルバイトA(身長が180cm)と断定できたため、その幹部社員は他の正社員にも報告しAを監視することにしました。本日のAは海系のCRコーナー担当であったため、メインの監視カメラモニターをそのコーナーに固定して凝視していると、1台大当たりがかかりました。Aは足早にその遊技台に向かったのですが、なぜかその台の客は隣の席の空ドル箱をAに渡したのです。Aはそれを不自然な形で受け取り、空箱の中に手を突っ込み何かをつまみ上げポケットにしまいこみ、空箱を元の場所に戻し、おもむろに継続札を客の頭上の札差に差し込みました。

監視カメラの映像をアップにして大当たり数字を確認すると、なんと数字は偶数だったのです。当然交換出目ですから継続札は挿されないはずなのです。すぐにAを呼んで問い詰めようと思いましたが、しばらく泳がすことにしたところ、驚くべきことに別の客にも同じことをしている光景が映し出されたのです。この時点でAを事務所に呼び出し問い詰めたところ、複数の客と契約して、交換出目の大当たり時にお金をもらって継続札を挿していたことを白状しました。このAですが、歳は30歳で3年勤めているベテランバイトです。お金は見逃し1回につき500円をもらうそうで、ウイークデーで1万2,000円ぐらいになり、土日休日等には2万円ほどになったと言いますから、開いた口がふさがりません。警察を呼んで処分してもらおうとも考えたのですが、そうなると当然客への尋問が必要となるわけです。この恩恵(?)に預かっていた客は一人ではなく、少なくても10人以上の客が関わっていたことも白状したため、警察への通報はあきらめました。結局はAの解雇のみという超アマ処分に終わりましたが、このことはいまでも悔やまれます。

良い意昧での緊張感を維持することが内部不正防止に繋がる

発覚しにくい内部犯行にも注意が必要さて、A-NETの当初は年に700件以上のゴト事例が掲載されていたこともあり、それらをいま見直すととても参考になることがいっぱいあります。が気になる点も一つあります。それは内部犯行の事例が1事例しか掲載されていないことですが、最後に先日関西で発生した内部犯の事例を紹介いたしますので、ぜひ参考にしてください。

ところで、こうなってしまった原因ですが、冷静に考えると質の悪いアルバイトがいたからだけではない、ことが判ります。その何点かを挙げてみますと、まず一つ目は、当時は会社の方針による正規社員の急激な切り替えがあった時で、大学卒を大量に採用し経験豊富な古い社員はほとんど解雇しました。

そしてすぐに新社員に責任を持たせたわけですから、ホール現場のあやがほとんどわからない状態であり、先述したようなスタッフと客がつるむ、等の不正行為へ目を向けるというような余裕はほとんどなかった、ということです。 次に二つ目ですが、元々このラッキーナンバー制は一人のスタッフが目視によって確認して、交換か継続かを決定していたわけですから、はじめから不正が発生する余地があったわけです。しかもよくよく考えてみるとその役目はとても重要なものなのですが、それを全てアルバイトに任せきりになっていたわけです。さきほど、古い社員はほとんど解雇された、と言いましたが、逆に古いアルバイトは残ったのです。その中には百戦錬磨の兵(つわもの)もいて、それがこの話の主役になっているAであったわけですが、私が問い詰めたときに「リベートをもらって何が悪いんや!」とばかりに開き直っていたほどですから、大学を出たばかりのホール経験が少ない新米幹部を手玉に取ることなど、容易(たやす)いことであったではと思います。

結論としては、正社員とアルバイトの関係に良い意味での緊張感がなく、任せ過ぎていたこと等です。当然他のアルバイトも巻き込まれているのでは?という心配があったため、その後徹底調査しましたが、幸いなことにどうやら他のスタッフは関わっていなかったようでした。現在は、「無制限出玉移動有り」が主流となっているため、特殊な話と捉えるかもしれませんが、いまでも似たような不正の話はよく聞きます。ホール内では正社員・アルバイトの隔てなく適度な緊張感を持続させることが大切なようです。

■南光国昭■
パチンコパチスロ産業界で、数少ないゴト対策の専門家として多方面で活躍している。株式会社コスモローム研究所相談役、日遊協近畿支部セキュリティー部会顧問、日遊協不正対策勉強会講師。