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セキュリティー温故知新 (8月号)

今月は趣を変え、インタビュー形式での寄稿になります。

かなり暑くなってきました。夏特有のゴト事案というのはあるのでしょうか。

夏は薄着になるため、他店玉・メダルはもちろんゴト器具も体に仕込み難くなりますので、ゴト師の心理としてはやりにくい時期になると思います。かといって、ゴト事案が減ることはありません。セカンドバックに仕込ませてゴト器具を持ち込んだり、他店の玉などはペットボトルに入れて持ち込んだり、彼らはあらゆるスキを狙って仕掛けてきます。

油断していたらダメという事ですね。

そうです。店舗側も「夏は薄着になるイコールゴトがしにくい」という、先入観を持ってしまっています。そういう虚を突かれたのが、4号機の「吉宗」で流行った「ナビタ」ゴトです。
これは、3月号でも紹介した事例ですが、初めて発見したのが7月でした。「吉宗」で原因不明の大量の赤差玉が出ているとの通報を受けてそのホールに向かいました。
到着後すぐにホールコンデータを見せもらったところ、40台設置されている「吉宗」のほとんどがありえないような大当たり連チャンをしていたのです。この当時ですと、大花火で初発生し他メーカー機種にも波及した、体感器付きソレノイドゴトが主流でしたから、まずは当然このゴト手口を疑いました。しかし、録画ビデオを確認して、ソレノイドゴトでないことを思い知らされたのです。
このときのゴト師と思われる対象者数は30人以上だったのですが、ほとんどが軽装でそのうちの何人かは半ズボンだったのです。ソレノイドゴトは、スタートレバーに糸を引っ掛けてソレノイドで引っ張るゴト器具であるため、その元となるソレノイドはひざぐらいの位置に固定しなくてはなりません。
通常は普通サイズのズボンのひざ位置に小さな穴を開け、そこから糸を出しレバーに引っ掛けるため、到底半ズボンでは隠し切れるものではありません。ましてやこれだけの人数ですから何らかの痕跡があるはずですが、それがまったくなかったのです。
この「ナビタ」というゴト器具は、約12cm(長さ)×6cm(幅)×lcm厚み)ほどの小さいものですから、半ズボンのポケットに簡単に仕舞い込めたわけです。このときのゴト師グループは、ホール側がソレノイドゴトの先入観を持っていることを利用したわけです。

固定観念によって視野が狭くなっていたという事ですね。

そうですね。ソレノイドゴトの印象が強烈であったことは否めません。そのときにはまだ「ナビタ」の情報はまったくなかった時ですからね。
仮に少しでもその情報が持っていてポケット検査等ができていれば、ほぼ全員が器具を持っていたことを確認できたと思います。ちなみに「ナビタ」は押し順を正確にナビしてくれるので、だれがやっても連チャン可能でした。
まったく話しが変わりますが、先日ほとんど日本語ができない中国人が運転免許証試験会場において、極小のイヤホンを使い外から信号をもらって免許証を不正に取得したという事件が報道されていました。
いわゆるカンニングです。科学の進歩は著しいのですが、善に使われるだけなく、このように悪に利用されることも非常に多いわけです。パチンコやスロットは電子機器の塊ですから、今後、ますます何があってもおかしくない状況になるでしょう。ですので、固定観念を持たず不正に対処することは重要でしょうね。ところで、メイン基板のセキュリティ性能が向上したため、ターゲットとなったのはセレクターやホッパーです。そして今では、ART機のサブ基板を狙ったART延命ゴトが増えています。この様に、ゴトの手口、ターゲットは市場の動向に合わせて常に変化していますので、こちらも常にあらゆる可能性を考えておかないと対応が遅れるという事です。
思い込みが発見を遅らせたという点で、ゴトではありませんがもう一点別の事例を紹介します。これは、私がまだホールで働いていた時の話ですが、パチスロコーナーで、毎日数千枚単位のマイナスの誤差が続いた時期がありました。当時、スロットコーナーは好調で平均稼働は毎日2万枚を超えていました。そんな中においての数千枚単位の誤差玉だったので、大事とは捉えていませんでしたが、何かやられているのではないかと個人的にずっと気になっていました。ある日、コインホッパーを調べて見たところ、センサーの通過地点に手垢が固まり付いていて、メダルがセンサーを反応した後に何枚かが下皿に戻ってしまうことが確認できましたが、他の台も同じような状態になっていたのです。これはセレクターにも同じことが言えるわけですが、ゴトだと勝手に決めつける前にこういう点も注意する必要がありますね。
ところで、昨年から健全化機構がジェットカウンターの検査を始めました。やり方は5千円分買ってそのままジェットカウンターに流すという単純な方法ですが、そこで買った分の玉数がわずかながら計数されていない、という報告がされました。これは明らかにジェットカウンターに付着したほこり等によるものと思います。元々、ほこりがたまりやすい部分ですので気をつけて下さい。

これから盆休みなど長期休暇中は稼働が上がります。
ゴト師の視点では、繁忙期は狙われやすいのでしょうか。

基本的に、客入りの良い店ではゴトはやりにくいと思います。まず、空き台がある程度でないとゴトはできません。ゴト師は大抵グループで行動しますので、空き台がまばらにあるような店の方がやりやすいのです。またその時、ゴトを実行する両脇を固める訳ですが、台を確保するために物品を置きます。ちょっと暇な店では長時間、タバコやライター、中には週刊誌や新聞といったかない大きな物までほったらかしになったままというケースもあります。
こういった物品はゴト器具を隠すために使われることもあるので、空き台整理をしっかり行い、ゴト師が仕事をしにくい環境づくりが重要になります。また、どの店にも導入されるような人気機種の導入のタイミングも気を付けなければいけません。人気機種が導入されると、必然的にそのコースに人手が回されます。そうすると、それ以外のコースでは手薄になるためです。

なるほど。ゴト師はそんなスキを突いてくるのですね。

そうです。これは、私が現場にいた時に実際に発生した事例です。当時はスロットコーナーには1店舗に1機種だけというケースが主流でした。その時、導入した機種は残念ながら、導入後すぐ客がまばらという状況になっていましたので、我々従業員はまれに巡回するくらいで、正直、ちょっと気がゆるんでいたのだと思います。ある日、私がコースを巡回していると、床じゅうに木くずが散乱していました。どこから落ちてきたんだ、と周りを調べてみると、筐体が島からせり出している部分の横に大きな穴が開いていました。そこから、メダルが抜き取られていたのです。運が悪いことに自動補給を導入していましたので、相当量抜かれたと思います。この事から分かるのは、客がそれなりに入って、従業員がバタバタしている店が狙われると思われがちですが、実はそうではなくて、従業員が暇にしているような店が狙われるケースもあるという事です。

そんな大胆な犯行をするゴト師もいるのですね。

これは特殊なケースだとは思います。色々お話ししましたが、ゴト師の行動パターンは常に変化しているという事を頭に入れておく必要があります。例えば、パチスロですがこのところ機械性能がずいぶんと向上してきたART機ですが、純増枚数は1.5枚とか2枚です。
4号機のAT機やストック機と比較すると増加スピードはかなり遅いです。昔は夜の9時に来店して数千枚持って帰るという事が可能でしたが、今は数千枚出すには半日くらいかかってしまいます。ですので、最近のゴト師の特徴として朝から打つというケースが多いようです。この様に、具体的なゴト手口を知らずとも、機械性能や市場の動向をある程度把握していれば、効果的な対策が打てるようになります。最近、AKB48のパチンコが発表されました。導入がスタートすればホールは盛り上がりそうです。しかし、先ほど言いましたように、こんな時こそゴト師にとっては狙い目なのです。その事を頭に入れ、日々のホール営業に頑張って欲しいと思います。

ありがとうこざいました。

■南光国昭■
パチンコパチスロ産業界で、数少ないゴト対策の専門家として多方面で活躍している。株式会社コスモローム研究所相談役、日遊協近畿支部セキュリティー部会顧問、日遊協不正対策勉強会講師。