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ゴトと闘う (_2009年4月)

寝る間も惜しんだ若い時は怪しげなセミナーでも情報入手

「日遊協」の読者の皆さんはじ めまして、南光國昭と申します。 このたび、セキュリティー関連の 話を連載させていただくことにな りました。よろしくお付き合いく ださい。

この連載においては皆さんにな にをお伝えすればよいのか?も ちろん私の専門であるホールセキ ュリティー関連を中心に書くつも りですが、世間で起きているニュ ースや、その他のあまりこの業界 に関係なさそうなこともなども交 ええながら、話を進めたいと思っ ています。

ところで、本誌への連載は初め てですので、お前は何様だ1いっ たいなにをしゃしゃり出て生意気 に連載など書くのだ1と思われる 方もいるかも知れません。退屈で しょうが、少しばかり誌面をお借 りして、自己紹介を兼ねた私の履 歴とセキュリティーにのめりこん だきっかけなどを、先にお話しい たします。

初めて見た不正ロム驚きで背中ドキドキ

私は現在、大阪府枚方市で事務 所を構えている、株式会社コスモ ローム研究所の相談役を勤め ています。弊社はホールセキュリ ティー関連の仕事が専門で、特に 遊技台検査を主にしています。弊 社の先代の社長で現在会長職であ る松波義文(元日遊協理事)が整 形外科医であったことから、レン トゲンによる基板検査を思いつき、 10年ほど前に業界に始めて紹介し ました。余談ですが、最初に松波 の病院内で人ひとりが楽に乗る大 きなレントゲンの機械に基板を乗 せて、モニターに写った不正ロム をはじめて見たときには、正直驚 きと興奮が重なり合い背中がゾク ゾクしたことをいまでも鮮明に覚 えています。

次に業界においては以下の役職 を頂いております。まずは日遊協 近畿支部セキュリティー部会の部 会長です。このセキュリティー部 会は昨年事情があって4〜5回ほ ど休会状態になっていましたが、 ほぼーか月に1回開催していまし て、この2月時点で112回目を 迎えたほどの長寿部会です。つま り約10年間続いていることになり ます。当初は近畿支部だけでの開 催でしたが、最近は中部支部とも 互いに交流しています。その他に は、東京で2か月に1回開催してい るいわゆる「ゴト対策4団体・5団 体会議」にも日遊協のメンバーとし て出席させていただいております。

また会社的には、1府6県の立 入検査のお手伝いや、時々所轄警 察署等のお手伝いもさせて頂いて おります。他にもいろいろやらせ ていただいていますが、これから も業界発展のためにがんばって、 生きていきたいと心に決めており ます。

このたび、日遊協は3月23日東 京を皮切りに、全国6か所(5月13日九州、6月12日中部、7月10 日北海道、9月n日近畿、10月器 日中国・四国)で不正対策勉強会 を開催します。.私はすでに東京の 勉強会で講師として参加しました が、今後も最新のゴト手口等を画 像や動画等或いは実機等をふんだ んに使って紹介する予定です。セ ミナーは有料での開催となります が、ゴト器具等もしっかりと用意 しますので、特にホール現場の最 前線におられる方はこの機会を見 逃すことなく、ぜひともご参加さ れて実際にそれらのものを手に取 ったりして確認し、自社のセキュ リティーにお役立てください。

1650台の検査、社長の厳命で「覚悟」

私がホールセキュリティーに関 わり出したのは、コスモ産業株式 会社(4店舗、総台数1650台) という会社でした。ホールスタッ フとして17年間働きましたが、マ ネジャi、店長等を経験した後、 2代目に代わった社長が「これか らはセキュリティーを重要視しな くてはホール経営が成り立たない」 との信念を持ち、「南光君、君を 防犯部長に任命する。自社の遊技 台1650台を全て検査しなさい」 と命令したのが、ことの始まりで す。

なぜ私であったのか。多分私が、 元々ホールでスタッフをしていた 時でも、ゴト師等だけではなく帆 歳未満の未成年の客や、ホールに とって害になる不良客等の追い出 しを進んでやっていたことが見込 まれたものと思います。ただ、そ のときの私はホールに出る営業が 好きでしたし、セキュリティーを 担当する気などさらさらなかった ので、一旦は社長に「社長、セキ ュリティーは素人では不可能では ないでしょうか?専門のセキュリ ティー会社に任せてはいかがです か?」と断わりを入れました。し かし、社長は「いや、いまあるセ キュリティー会社など信用できな い。自社でやらなくてはだめだ。

君がやりなさい1」との2度目の 厳命を下しましたので、私は覚悟 して「よし1どうせならば、仕事 を徹底して覚えて後々自分でセキ ュリティー会社をやるぐらいの気 持ちでやろう」と秘かに決心しま した。このときの決意がいまにつ ながったのだと思います。

10年ほど前までゴト被害の認識が浅かった

ただし、いまでこそホールセキ ユリティーの重要性を、どのホi ル経営者も自覚していると思いま すが、12〜13年前当時はまだまだ バブルの残像がしっかりと残って いた時代ですので、ゴト被害につ いて自覚されていた方は極く少数 でした。そのため、情報の入手が 非常に難しく、正直なところ、な にから手を付ければよいのかもわ からない、というのが実状でした。

裏ロムの話題などゴトについて は業界誌にもたまに出ていました ので、まずは遊技機の基板検査か ら始めようと考えたのですが、ど う見ればよいかもわからなかった ので、私は社長にお願いして市販 されている高価なロムチェッカー を3台(全て別の種類)買っても らい、それで検査を始めたのです。

そのころは、ほとんどのパチン コ遊技機の基板プログラムがプラ スワン方式であったため、ロムチ ェッカーで中身を確認することが でき、それを元に横並びの検査も できる機能がついていましたので、 閉店後や定休日を利用してそれを 検査したものでした。(そんなの 違法ではないですか?とおっしゃ る方いると思いますが、ごめんな さい、すでに時効であると思いま すので、あまり硬いことは言わな いでください)いずれにしまして も、いまでは不可能であるような ことも経験できたおかげで、私の 知識は飛躍的にアップすることが 出来ました。それを元に自社の遊 技台を徹底的に検査し、同時に対 策を実行しました。

また自分の知識レベルを少しで も上げるため、暗中模索しながら 関西はおろか東京などで開催され ていた、ゴト師が主催しているの ではと思われるような怪しげなゴ トセミナー等も積極的に参加して 情報を入手、無我夢中で仕事を覚 えたものです。そのときに寝るこ とさえ惜しんで一生懸命やったこ とがいまにつながったわけです。 そのときの思い出は一生の宝もの であると思っています。

権利ものからNG不正中継基板を発見

ところで、その最初の検査、1 650台の遊技機はいったいどう だったのだ?不正機は出なかった のか?という声が聞こえてきそう です。この最初の検査においては、 前述しましたように私の知識その ものが乏しかったこともあり、ロ ムチェッカー頼りのメイン基板の みの検査がほとんどでした(レン トゲンが有効とわかったのはその 約1年後)。正直なところ、目視 による基板(ロム)検査を覚えた のは、ずいぶん後からです。そう いう状態でしたので、ちょっとお かしいと思われた遊技機は何台か あったものの、絶対に不正だとい ・スロは見つからなったのです。

しかし、この自社内の遊技台を 検査したしたのが5月でしたが、 その年の9月に某セキュリティー 会社がハーネスチェッカーを発売 したことをきっかけにそれを購入、 そこの会社のスタッフが協力して くれて自社系列店であるS店の定 休日に、400台ほどあったパチ ンコ台を検査したところ、36台設 置されていたニューギン製のミル キーバーという権利モノから、2 台のNGが出たのです。

なぜ、NGが出たのかまったく わからなかったので、私はとにか くハーネスをバラすことから始め ました。覚えている方もあると思 いますが、このミルキーバーは中 継基板が遊技台裏側上部に取り付 けられていて、20本前後の配線が そこに集中していました。それを 全て取り外してベタッと張り付い ているビス止めされた中継基板ま で到達するには、慣れないと12〜 13分ほどかかります。それでも中 継基板を外すところまでいき裏側 を見ると、きれいにハンダ付けさ れた小さいICがいっぱい付いて いたのです。しかし、そのときの 私はそれが何かも気が付きません でした。手伝ってくれた営業マン が「南光さん、普通の中継基板に はそういうチップは付いてないは ずですよ」と言います。そこで、 今度はNGが出なかった同じ並び 列のミルキーバーの中継基板を外 してみたところ、たしかにその中 継基板にはハンダのパターン以外 なにも付いていませんでした。そ こで初めて不正中継基板であるこ とを思い知らされました。この時 にはすでにA-NETをパソコン で見ることができる状態でしたが、 そこにも不正中継基板の事例は掲 載されていませんでした。

大量生産された「不正」想像もつかない被害が

さて、被害額はどれほどなのか? 仕込みをされたのはどの時点から なのか?を調査するためホールコ ンでその2台のデータを確認する と、1週間に3日〜4日ほど7万 個から10万個ぐらいの赤が出てい て、それ以外の日はまったく出て いないことがずっと続いていまし た。ミルキーバーという機種はも ともと出入りの激しい台のため、 他の台のデータも同じようなこと になってはいましたが、出ない日 もそこそこの大当たりは発生して いました。つまり、セット打ちし ないとまったく大当たりはかから なかったのです。

仕込みをされたのはどの時点か らなのか?このコスモ産業の系列 店はすでにそのときには全台にワ イヤーロックを付けていましたし、 この中継基板の交換には相当の時 間もかかることから、営業中の仕 込みはちょっと考えられません。

そこで、ホールコンのデータをど んどん遡って追っていくと、なん とその年の6月初旬にホールコン に原因不明の故障が発生して、そ れ以前のデータが飛んでしまって いたのです。少なくともその6月 の時点までは同じようなデータが 続いていましたので、付けられた 時期は6月以前ということになり ます。可能性として考えたところ、 このミルキーバーは前年の12月に 板(盤面)替えをしていますこと から、ひょっとするとそのときか ら付けられていた可能性がありま す。そこから被害額を計算すると 楽に5000万円ぐらいの数字が 出てきました。

ところで、いま考えるとこの不 正中継基板は非常にきれいなもの でしたので、かなり大量生産され たものであることは間違いありま せん。ということは相当多くのホ ールに付けられていたことが容易 に想像でき、多額の被害が出たは ずなのですが、当時、まったくと いっていいほどこの事例の報告が 上がってなかったのです。

要するに気が付いていないホー ルは相当あったはずなのです。私 が勤務した会社でさえ前述の被害 額ですので、業界全体ではどのく らいの被害が出たのかは想像もつ きません。

なお、防犯部長を任命される前 年ぐらいには、ギンパラの電波ゴ トが流行したり、梁山泊グループ が鼻高々と闊歩してテレビ等に取 り上げられていました。私はこれ らのこともしっかりと経験してい ますので、この連載中に取り上げ てみたいと思っています。

■南光 国昭■
パチンコパチスロ産業界で、数少ないゴト 対策の専門家として多方面で活躍している 株式会社コスモローム研究所相談役、 日遊協近畿支部セキュリティー部会顧問 日遊協不正対策勉強会講師。