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ゴトと闘う (_2009年9月)

激しいゴト技術の進歩 対応の「手順」で悩みは深い

7月中旬に関東甲信越で早々と 梅雨明け宣言され、いよいよ暑い 夏の到来だと思っていたら、な んと7月後半になってその宣言が 取り消され、同時期にとんでもな い集中豪雨による被害が各地で発 生。その筆頭となった山口県防府 市では、山間(やまあい)に建て られている老人ホームに大量の土 石流が流れ込み、大勢の人が亡く なっています。また、8月に入っ てからも、兵庫県の佐用町では集 中豪雨に見舞われ、川の水位がな んと5メール以上も上昇し、大勢 の方が亡くなられています。なん でも日本全国にこのような危険な 区域は50万か所以上あるそうです が、それがわかっているなら、国 や自治体は未来のためにもこのよ うな危険な箇所を徹底的に調査し、 総力を挙げて早急に改善すべきで はないでしょうか。

さて今号では、ゴト手口とそれ に伴うゴト器具や改造技術力の驚 くほどの進化や、タブーなのかも 知れませんが、批判を承知で遊技 機の規則などを"現場目線"で少 しだけ触れてみたいと思います。 それとあるホールで最近発生し た内部犯行による不正事案を紹介 しますので、皆さんで考えてみて ください。

.私は前々からセミナーや本誌の 連載を含む雑誌において、「ほと んどのゴト手口は過去に起きたゴ ト手口の焼きまわしだ」というこ とを常にお伝えしています。本来、 焼きまわしであるわけですから、 ゴト対策はさほど難しいものでは ないはずなのですが、手口・器具・ 改造技術力の進化が著しく、ゴト 実行レベルがどんどん上がってい るのです。こちら側がそれについ ていけていない、というのが現状 であろうと思います。そのために 対策が遅れ多額なゴト被害を出し てしまっていることが度々あるこ とは否定できません。これには当 然ながら理由があります。現場目 線ですが、その理由のひとつとし て「規則に縛られ過ぎている」とい うこともあると思います。

こちらの状況を 十分承知の上で どんどん攻めてくる

一般社会においてもそうなので すが、例えば冒頭の自然災害が発 生した場合や、我が家に強盗事件 等が発生したとき、一番必要で大 切なことはいち早く対応と対策を とることであると思います。

しかしながらわが業界の場合は、 仮にゴト師がなにかの手口で暴れ 回っているという情報を入手して も簡単には対策が取れず、その間 にどんどんゴト被害が大きくなっ てきている、というジレンマを多 くのホール関係者が抱えていると 思われます。もちろん、コンプラ イアンスはわが業界存続のために は絶対的に必要不可決であり、い まさら愚痴を言っても仕方がない ことはわかっていますが、相手側 (ゴト師グループ)は好き放題、 やりたい放題で攻めてきているわ けです。こちら側は手かせ足かせ に近い状態での守りのうえ、下手 をするとなにも対策が取れない場 合さえあり、当然のことですがゴ ト師側はこういう事情を十分に承 知しているため何回でも来店して きます。

逆上した最高幹部が 無届けでゴト対策 皮肉にもゴト師が通報

少し前のことですが、地元では かなり話題になったこんな話があ ります。それは前述したような状 況におかれたホールが犯してしま った、まさに「笑えない悲劇」と しか言いようのないものです。

何年か前のことですが、あるゴ ト手口が流行ったことがありまし た。某地域にあるAホールにもご 多分にもれずこのゴト手口を使うゴト師が集団で来店しましたが、 店はわずか10日ぐらいの間に飛び 飛びに3回ほどゴト被害に遭いま した。その後、対策会社の情報を 得てようやくある種のゴト手口で やられていることに気づいたので す。被害総額を 調べるとかなり の額であること がわかり、この 店の最高幹部は 頭に血が上って しまったのか冷 静さを欠いてし まい、腹立ち紛 れにいち早く無 届けでゴト対策 をしてしまったのです。それから 何日も経たないうちに同じゴト師 グループが再度現れたのですが、 当然ゴトができません。というこ とは、なんらかの対策を施してい るはずだ、ということをゴト師グ ループはすぐに気づきました。こ のゴト手口の対策部品は他の地域 では認可されていましたが、この 地域においてはまだ認可されてい ないものであったことを知ってい たゴト師グループは、客を装って警察に通報したのです。Aホールはその日のうちに所轄の警察官の立ち入りがあり、その後営業停止処分の命令が出ました。これと似た話は他の地域でもたまに聞くことがありますが、もちろん、規則を破って無届けで対策をしたホールが悪いことは確かであり、これを擁護するつもりはありません。しかし、なにか釈然としない話だなあーと感じるのは私だけではないと思います。

当時、衝撃的だった 「クレマン」の登場 いまさらに進化型が

ところで、ANET(全日遊連 分含む)の最新ゴト・不正行為情 報欄のデータベースにおいて、最 新のゴト事例を確認しますと、メ イン基板の偽造改造ゴト、ぶら下 がりゴト、電波ゴト、セルピアノ 線ゴト、磁石ゴト、玉やコインの 持ち込みゴト、スロットのセレク タを狙ったクレマンやコイン戻し ゴト等様々なゴト事例が掲載され ていますが、どの事例を見ても、 真新しいゴト手口は存在しません。 イタチゴッコが繰り返されている ものばかりで、ホール関係者が知 らないゴト手口はまず存在しませ ん。ただし、何度も言いますがほ とんどのゴト器具が進化していま す。

もちろん時として「えっ!」と、 驚くようなゴト手口が突然出現す ることもあります。例えば「クレ マン」ゴトです。2003年の年 末に第一報がANETの情報欄 に初めて「パチスロ機に対するク レジット上げのゴト器具につい て」という命題で掲載されました が、まさに衝撃的なデビューで、 このゴト器具を作成したゴト師が 茶化して名前を付けたのか、当時 は「クレマン君」と呼ばれていま した。ゴト器具をセレクタに差し 込みスイッチを押すだけで、2秒 後にはクレジットが満タン(50枚) になってしまうというのですから、 ホールとしてはまさに戦々恐々た る思いでありました。同時に防御 方法はあるのか?かなり深刻な状 況でした。実際に遊技機独自の規 則などで縛られ、思うような対策 が取れず、相当な被害が出ました。 そのA-NETページには、「多数 のメーカーが製造する多くの機種 に対して有効な模様」との警告文 が記載されています。クレマンゴ トが初めて発生して以来6年弱も 経過している現在、当時被害に遭 っていなかったメーカー機種にも 波及し、前にも紹介したことがあ りますが、すでに2、3の進化型 クレマンが登場しています。・

目視点検や素人では まず判別できない 周到さとレベル

話は変わりますが先日あるホー ルにおいて、内部スタッフが複数 関わった不正基板事件が発生しま した。被害にあった遊技台は「C R新世紀エヴァンゲリオン最後の シ者SFWS」(Bisty)です が、写真(画像11)の通りますます 改造技術に磨きがかかり、非常に 精巧な作りです。日頃、あまり訓 練する機会のないホールスタッフ による目視点検程度では絶対に発 見は不可能、と言える代物です。 毎日毎日基板検査をやっている弊 社スタッフでさえ、目視検査だけ では不自然さがあることを説明で きても、「黒」との断定する説明は 難しいでしょう(ただし、弊社で は発見のポイントとなるある部分 の特徴を見つけ出していますが、 これは残念ながら公表できません。 どうかご了承ください)。結果的 には得意のレントゲンを使って「里巴 (画像1、2、3)と断定しました。

例によって、東芝製の盟HC5 74APと明記されてあるIC13 とIC15チップを改造しているの ですが、弊社が入手している情報 によると、彼ら(ゴト師)も最近 では改造段階での小さなミスを犯 さないようにするため、先に内部 協力者にターゲット台基板の改造 部分をデジカメ撮りさせておき、 同じ製造年月日のチップを用意し て交換します。同じチップが用意 できない場合は関連するチップ全 て(この場合は4個)を交換する こともあります。目視検査による 発見のポイントはカシメ部分の異 常の発見と、改造チップの再ハン ダ部分の状態比較(画像4、5) が大部分を占めるのですが、この 場合は周りのチップのハンダ状態 が同じであるため比較が出来なく なり、再カシメをほぼ完壁(画像 7、8)にやられると素人ではほ ぼ発見不可能です。

改造は丁寧にカシメを開封する ことから始まります。まずは先に 正規チップを一度取り外し、改造 したチップ〈当初はチップ裏側に 極小のICを隠していたため横側 から覗く(画像6)ことで確認で きたが、最近はほとんどがチップ 裏側を掘り込んで埋め込んである (画像9、10)を再ハンダする わけですが、このICチップ改造 事案が発生しだした当初の改造基 板と比較すると、月とスッポンと 言えるほど想像もつかないほどの 技術の進歩です。

店の幹部2人が 「やくざに脅されて」 メイン基板に不正を

さて、今回の事件が発覚したき っかけは常連客X氏からの通報で す。ある日、その店の最高責任者 A氏がこのX氏に呼ばれ「お前の ところの主任Bと班長Cがグルに なって客とつるみ悪いことをやっ ている。うそだと思ったら○○台 と△△台を調べてみろ。客は毎日 来ているやくざのDだ。」と2台 の台番号を指摘してきました。A 氏は半信半疑でしたがまずは言わ れた台のデータを詳細に調べたと ころ、ちょっと変な玉の出方をし ていました。次に監視カメラの録 画を早送りで確認したところ、20 日ほど前の深夜1時過ぎの録画映 像に、そのBとCが指摘された遊 技台のあたりで何かの作業をして いるところが映し出されたのです。 ホールスタッフは通常遅くとも12 時半ごろには全員が仕事を終えて ホール内を出るはずなのです。A 氏はすぐさまこのBとCの2人を 呼びつけて通報があったことを伝 え、またビデオ映像を見せつけて 何を仕込んだのかを問い詰めたと ころ、○○台と△△台のメイン基 板改造を白状しました。

ちなみにこの2人はともに10年 近く在籍していて、どちらともホ ールの鍵を預かり交替で店の開店 閉店を任されている身分であり、 店の近くにアパートを借りて妻子 まで抱えているのですから、本来 こんな危ないことをやるメリット はないはずなのです。当然、A氏 は「なんでこんなことをやったの か」と問い詰めたわけですが「実 はやくざDにアパートの所在をつ かまれていて、妻子のことを脅さ れていたため仕方なくやった」と いう答えだったそうです。A氏は 「仕込みを白状させてからは、あ いつらを分断して一人ひとり問い ただしてみた。もちろん、分け前 の話も白状したがどちらとも思っ たのより少ない額であったので、 多分本当の話だと思う。ただ、私 としても誰を信用していいのか、 いまは疑心暗鬼の状態だ」と嘆い ていました。

誤解しないで下さい 不正なくすため 全力で努力しています

今回の事件はA氏に無理にお願 いして、当然のことですがホール 名などを一切隠す条件で公開許可 を頂くことができました。実際問 題として内部不正については、全 日遊連やA-NET等のように業 界的には公共とも云える情報欄に はほとんど掲載されていません。 しかしながら、(内部不正が)他で は発生していないということでは 決してありません。中には上記事 件どころではなく、ホールオーナ ーが腰を抜かすのではと思えるほ どの怖い話もあり、私としてもそ のあたりの詳細をお伝えして皆さ んの参考にしてもらいたいところ ですが、残念ながら種々の事情が からんでそれもままなりません。

ところで正直なところ、ここま で書き終わってからこの題材を使 ったことにちょっとばかり後悔心 が出始めています。それは書いて いてとても暗い気持ちになってし まっていることと、ホール内で発 生するこの手の事件の原因は、「ホ ール側全体の管理体制に不備があ るからだー」などのとんでもない 誤解発言を招く恐れがあるからで すが、もう締め切りも近く書き直 す時間がありません。このまま提 出します。

最後に、このぺージをパチンコ 業界以外の方が目を通されること もあるかも知れませんが、ホール 及びパチンコ業界の名誉のため以 下のことは断言できます。わが業 界はいま、お客様に安心してご来 店していただくために日夜不正事 案をなくす努力を全力で取り組ん でいます。その中で不幸にも本誌 で紹介したような不正事件や、前 号で取り上げた凶悪な事件がホー ル内で発生が報じられると、それ をきっかけに「パチンコ業界が存 在するための悪」に結び付けたが る方がいますが、ある意味これは、 どんな業界でも起きる可能性のあ る犯罪でもあり、ごく一部の出来 事でもあるということをぜひとも ご理解して頂き、誤解なきようよ ろしくお願いいたします。

■南光 国昭■
パチンコパチスロ産業界で、数少ないゴト 対策の専門家として多方面で活躍している。 株式会社コスモローム研究所相談役、 日遊協近畿支部セキュリティー部会顧問、 日遊協不正対策勉強会講師。